Ⅱ郭と出郭間の堀切の石垣
六角氏家臣永原氏の壮大な山城
所在地
滋賀県野洲市小堤・辻町
【アクセス】
国道8号線「大篠原信号」から1km程西進した「小堤信号」を過ぎ、更に200m程西進した「平田機工」の手前(東側)の路地を左折し、そのまま道なりに1km程進むと林道のゲートがあり、手前に駐車スペースがある。ここからゲートを越えて歩いて行く。
形状
山城(標高286m)
現状・遺構等
【現状】 山林
【遺構等】 曲輪、虎口、土塁、石垣、堀切、竪堀、説明板、遺構案内板、登城道案内板
満足度
★★★★★
訪城日
2011/02/23
歴史等
小堤城山城(こづつみしろやまじょう)は、六角氏家臣の永原氏により、15世紀末頃に築かれたと思われる。
野洲郡東部は、蒲生郡の馬淵氏の勢力下であったが、16世紀初頭からは馬淵氏の家臣であった永原氏がこの地域で勢力を築いた。そして、大永年間(1521~28)頃からは守護六角氏と直接主従関係を結ぶに至った。
軍事的には六角氏の中で中心的存在で、行政面においても前代の馬淵氏の郡奉行としての権力を継承する形で野洲郡全体に影響力を保持した。
小堤城山城の記録を残す文献は乏しいが、「永原上下の城」や「長原上の城」などの記述が見られ、「永原上の城」は小堤城山城を指し、「永原下の城」は上永原城を指すものと思われる。
小堤城山城は、六角氏家臣クラスの山城としては規模も大きく、石垣の構築箇所の多さでも他の六角氏家臣の山城から群を抜いた存在である。
『「現地(主郭跡)説明板」、「近江の山城 ベスト50を歩く・中井均著(サンライズ出版刊)」他参照』
現況・登城記・感想等
小堤城山城は、野洲・栗太郡内で最大の山城でもあり、大いに期待しての登城であったが、その期待を遥かに超える素晴らしい城址だった。
城の随所に見られる大規模な堀切と竪堀、至る所に残る石垣、主郭への虎口等々見どころ満載で、次々にそれらの遺構が見付かり、どんどん胸がワクワクしていった。
中でも、中世の山城の石垣を久しぶりに堪能するほど見ることができ、本当に楽しい登城だった (*^_^*)。
(2011/02/23登城して)
ギャラリー
縄張図(現地説明板より)
曲輪名が分からないので、仮に下図の曲輪名とする。山の中腹部にある主郭は、両側を尾根で挟まれ、南側の尾根は城山山頂の曲輪を中心に連郭式の曲輪群が配置され、東方面は古城山城へと繋がっている。主郭へは、一本の登城道が伸び、その両側に曲輪を配している。
登城口
写真左手前に駐車スペースがある。城跡へは、このゲートを乗り越えて真っ直ぐ進んで行く。
登城道
登城口から真っ直ぐ進み5分ほど行くと、2本目の曲がり角へ出る。ここを右へ曲がる。案内板に「城山まで900m」と書かれている。
登城道
曲がり角から真っ直ぐ(途中、左へ曲がる道があるので間違えないように)5分ほどすると交差路へ出る。左上に大きな石群を見ながら進む。この山は、石の産地なのだろうか、ここまでにも道路脇大きな石が散見された。小堤城山城に石垣が多く残っているのが理解できようというものだ。
展望台が前方に
道なりに2分ほど進むと急カーブの道になり、左手前方に東屋の建つ展望台が見えてくる。正面(東屋の右)に見える尾根上を行っても城跡まで行けそうだったが・・・?
大手道への入口
上写真の右に山の中に入って行く道があり、ここが本来の登城道である。
大手道入口
1~2分ほど進むと左へ入って行く道があり、城跡コースとなっており、主郭への大手道だろう。真っ直ぐ行く道は尾根コースとなっており、城山山頂付近で合流する。
大手道
山の中腹部にある主郭へは、一本の登城道が伸び、その両側に曲輪を配している。道の両側には所々に石垣跡が確認できる。
主郭下
大手道入口から5~6分ほど進むと、直角に曲がる道へ出る。角部に石垣が確認できる。
主郭下への急坂の虎口
虎口にも石垣が積まれており、そこから主郭直下までは急坂になっている。左上には曲輪があり、手前左から曲輪の外側を廻って行く道もある。
主郭虎口
上写真の虎口を登りきると、主郭虎口へクランク状に曲がるようになっている。左上が主郭。つまり、上写真虎口も含め、主郭部の虎口は急勾配で、切岸沿いに石垣を巡らしている。しかも、主郭直下で折れ曲がり、虎口まで敵の直進を阻む構造になっている。
主郭下の石垣
主郭も石垣で固められている。
主郭
主郭には説明板と縄張図(コース案内図)が設置されている。主郭の南側には竪堀のような急坂に石段様に石が敷かれ、東側には大規模な竪堀(写真後方)が山上へと伸びている。
主郭南側の石段
主郭東側の竪堀を登る
Ⅱ郭とⅢ郭間の堀切
竪堀を登りきるとⅡ郭とⅢ郭間の堀切へ出る。
堀切から主郭を見下ろす
Ⅲ郭北側の堀切
主郭の北東部の尾根は、上写真の堀切とこの堀切の2条の大規模な堀切でⅡ郭とⅢ郭に断ち切られ、この北側の堀切は大きな石が使われた石垣で固められている。そして、その角部分は初期の算木積みのような積み方がされていてかっこいい。
Ⅲ郭東側の石垣
Ⅲ郭は東側にも石垣が確認できる。この石垣も大きな石が使われている。
Ⅱ郭とⅢ郭間の堀切・竪堀を東側から見上げる
ここにも巨大な石が使われている。まさに「これでもか~!」と言われている感じだ。
Ⅱ郭とⅡ郭出丸(仮称)間の堀切と出丸北西部の石垣
竪堀を降り切ると、前方にⅡ郭とⅡ郭出丸(仮称)間の堀切と出丸北西部の石垣が見えてくる。
Ⅱ郭とⅡ郭出丸(仮称)間の堀切
この堀切の出丸側の石垣は見事なほど良好に残っている。出丸は、全周囲とも石垣が確認できる。
Ⅱ郭とⅡ郭出丸(仮称)間の堀切を振り返って撮影
出丸への石段
出丸へは、堀切の南端部に石段がついている。
出丸南東部の石垣
出丸北角部の石垣
Ⅱ郭
Ⅱ郭は細長いがかなり広く、北部が高くなっているが、櫓か何らかの建物があったのだろうか?
城山山頂部へ向かう
Ⅱ郭から、主郭南西部の尾根に沿って歩いて行く。この辺りにも、石垣(右)が確認される。
山頂への尾根
上写真の道を進むと尾根の西端へ出、尾根コースと合流する。そこをUターンするように尾根上を東へ進むと、途中に城山の神の祠があり、その向こうに城山山頂の曲輪が見えてくる。
城山山頂
城山山頂には、「城山286m・小堤城山城」の看板とここからさらに続く「古城山城・鏡山」への案内板が立っている。
城山山頂からの眺望
城山山頂からの眺望は素晴らしい。写真の岩の右手を降りて行くと古城山城へ行けるのだが、準備不足のため所要時間が分からず、次の予定もあるため次回に持ち越し。
城山山頂から三上山(近江富士)を眺める