山頂に残る城壁等の遺構群
リチャード獅子心王が第3次十字軍遠征の帰途に幽閉された城
ドイツ語名
Kuenringer-burg
別名
デュルンシュタイン城(Dürnstein Castle)
所要時間
ドナウ川遊覧船デュルンシュタイン船着場から約30分
山麓の登城口から約20分
訪城日
2012/06/03
歴史等
ケーンリンガー城は、バーベンベルク家時代(ハプスブルク家時代前の976~1248)の貴族ケーンリング(Kuenring)により、1140年から1145年にかけて築かれたと云われている。
この城で有名な話に、イギリスのリチャードⅠ世(獅子心王)の物語がある。この話には諸説あるが、一般的には、リチャード獅子心王は第3次十字軍遠征(1189~1192)で武功をあげたが、帰途オーストリア公レオポルト5世(バーベンベルク家)の名誉を傷つけたので怒りにふれ、1192~93にかけて、当城に幽閉された。
そして、1194年に莫大な身代金(銀3万5千kg)を払って釈放されたという。
尚、その後、リチャード国王を捕らえたことで、レオポルト5世はローマ教皇ケレスティヌス3世の怒りを買うことになり破門され、さらには、落馬事故が原因であっけなく死去したという。
城は、30年戦争の際の1645年に、スウェーデン軍によって破壊された。
『「地球の歩き方・ウィーンとオーストリア(ダイヤモンド社刊)」、「サイトErmak Travel」、「Wikipedia」他参照』
現況・登城記・感想等
リチャード獅子心王が幽閉されたことで有名なケーンリンガー城は、ドナウ川流域で最も美しいと云われるヴァッハウ渓谷にある町「デュルンシュタイン」の背後に聳えるごつごつした岩山の山頂にある。
山麓の葡萄畑から見上げる城跡は、廃墟と化してはいるが、これぞ「ザ・山城」といった姿に魅了された。
ハイキングコースとしてよく整備された道を山頂まで登ると、石垣・城壁・門・塔など比較的良好に残る遺構に出逢うが、それらは迫力があり見応え充分だ。
また、牢屋跡も残っている。尤も、「リチャード獅子心王は、実際には、イギリスから身代金が届くまで、この地の名産ワインやアプリコットのリキュールを飲みながら風光明媚なドナウ河畔でのホリデイを楽しんでいたそうだから、この牢屋に投獄されていたわけではないようだが・・・(苦笑)。
そして、山頂から見下ろすドナウの眺めは素晴らしくて、いつまで見ていても飽きないだろう。
僅かな時間しかなかったので、駆け足混じりの大忙しの登城だったが、ヨーロッパの本格的な山城跡を山麓から歩いて登城したのは今回が初めてな上、見応え充分な城跡で大満足でした。
(2012/06/03登城して)
ギャラリー
【登城記】
今回のツアーに「ヴァッハウ渓谷のドナウ川クルーズ」はなかった。メルク修道院を見学したあと、バスはウィーンに向かってドナウ川沿いの道を東へ向かい、デュルンシュタインが近づくと、町の背後に聳える岩山の山頂に見るからに「ザ・山城」といった姿のケーンリンガー城跡が見えてくる。船着場へ到着し、50分間のフリータイムが与えられた。山の高さは比高120~130mといったところだろうか。大急ぎで登れば間に合うだろうと思い登城を決心した。城跡を目指して小走りで行くと、ツアーで知り合ったY本さんも登るつもりだというので、一緒に向かった。ヨーロッパの本格的な山城を山麓から歩いて登るのは初めてだ。胸がワクワクしてくる。
ケーンリンガー城遠景
デュルンシュタインの町が近づくと、ごつごつした岩山の上に、「ザ・山城」といった姿のケーンリンガー城跡が見えてきます。かっこいいです(*^_^*)。
デュルンシュタイン船着場
バスはヴァッハウ渓谷ドナウ川クルーズの船着場に到着。
船着場前の駐車場からケーンリンガー城跡を望む
僅か50分ですがフリータイムが与えられました。駐車場からは、かなり遠いようですが、こうなれば登るしかないですよね(*^_^*)。
石垣と聖堂参事会修道院教会の城壁
バスが停車するや否や、城跡目指して小走りに、ドナウ川沿いの道を5分ほど西へと向かうと聖堂参事会修道院教会の手前に石垣が現れます。石垣の上、遥か奥に城跡が見えます。
聖堂参事会修道院教会の城壁
聖堂参事会修道院教会の城壁です。城跡へは、この角の道(写真右側)を山の方へ真っ直ぐ登って行けば辿り着きます。往時は、教会も城内にあり、これらを含めた大きな城だったのでしょうね。
聖堂参事会修道院教会
山頂の城跡へ登る前に、一枚だけ教会の写真を・・・。水色の塔が印象的です。リチャード獅子心王は、幽閉中、ここで美味しいワインを飲んでいたのでしょうか(*^_^*)?
聖堂参事会修道院教会への入口?
山頂の城跡を目指して登って行くと、左手に教会への門が見え、その左には、まさに城壁が・・・。やはり、ここも城の一部だったのでしょう。ツアーのフリータイムは、この辺りを散策するために設けられたのでしょうが、Y本さんと私は、目もくれずにひたすら山頂へと向かいました。
山麓へと続く城壁
山頂目指して、さらに登って行くと、左手には二重城壁が見えて来ます。この城壁は、山腹まで続いています。
山頂部に城跡が
デュルンシュタインの町の中をさらに登って行くと、山頂部の城跡が見えてきて安心、そして胸がワクワク。何せ、ヨーロッパで初めての本格的山城への登城なのです(*^_^*)。
葡萄畑越しに城跡を望む
家並みが途切れると、左手上に葡萄畑が現れます。当城は、リチャード獅子心王がイギリスから身代金が届くまで、この地の名産ワインを飲みながら風光明媚なドナウ河畔でのホリデイを楽しんでいたそうですから、当然、葡萄畑が広がっていても不思議はないのです。
登城口
そして、いよいよ登城口です。想像していたよりも、ハイカーが多いようです。
案内板
登城道は、ハイキングコースとして綺麗に整備されている。また、所々にかなり詳しそうな説明板が設置されているが、時間もない上、当然、ドイツ語で書かれ日本語は無い。写真だけ撮って、ひたすら登って行くしかないですよねえ(苦笑)。
最初に現れる模擬城門
登城口から3分ほどで門が現れます。いよいよ、ここから城域のようです。門の右側に説明板がありましたが、勿論、ドイツ語なので・・・(/。ヽ)。
平坦地(曲輪跡?、見張り台?)
模擬城門をくぐり、少し登って行くと、左手にちょっとした平坦地があります。日本の城でいう「曲輪」でしょうか?勿論、眺望の良さを考えれば、見張り台もあったことでしょう。
歴代の王?
歴代の王でしょうか?説明板付きですが、分かりません(/。ヽ)。
城門
さらに4~5分ほど登って行くと、今度は本物の城門が現れます。門の手前に”LEGENDE”の看板が立っている。ここからが、いよいよ伝説の地ということですかね。
平坦地
城門をくぐると、平坦地(曲輪跡)があり、勿論、ここからの眺望も素晴らしいです。
井戸跡
平坦地には井戸跡も残っています。
二重城門①
井戸跡のあった平坦地から1分ほど登ると、城壁群が現れ、2重になった門があります。
二重城門②
二重城門の最初の門をくぐると、門の傍に、石が積まれていましたが、崩れた石垣の石でしょうか?
城壁群
二重城壁をくぐって入城すると、頭上に城壁群が現れます。まるで、上からのしかかってくるような圧倒的な迫力のある城壁群です。
城壁群へ登って行く
いよいよ城壁群の中へ入って行きます。
塔?
城壁群は、かなり崩れてがいますが、塔のようなのも残っています。
山頂部が見えてくる
上写真の石段を登って行くと、山頂部の巨大な岩が見えてきます。廃墟となった城壁とのコラボがかっこいい。ところで、ヨーロッパ旅行をすると、崖の上に平気で座っている人をよく見掛けるのですが、ここでも、山頂の岩の上(写真左上)や、城壁下の狭い所(写真右)に多くの人が座っていたが、怖くないのでしょうか?右の人達が座っている岩の高さは約5mあり、さらに、その下は高さ50mほどの崖なんですが・・・(汗)。
城壁と崖
上写真の右側部分です。この人達が、どんなシチュエーションにあるか分かって戴けたでしょうか? 高所恐怖症の人なら、見ているだけでも気持ち悪くなるのではないでしょうか?
塔
先程見えた塔ですが、近づいて見ると迫力満点です。
本丸?
日本の城でいうところに「本丸」になるでしょうか。ただ、左下に見える穴は「牢屋」ですから、これは不思議なシチュエーションですね。
牢屋
牢屋の広さは、10畳くらいでしょうか。勿論、リチャード獅子心王は、ここに幽閉されていたわけではなさそうですが。
山頂部
登城口から小走りで登ること、約15分で山頂部に到着です。山頂部は巨大な岩になっており、かなり狭いですが、多くの人が休んでいました。
山頂部からの眺望
当城は、登城道の途中からも眺望のよい場所が幾つもありますが、山頂からの見晴らしは、やはり格別です。時間が許せば、いつまでも眺めていたいところです。
いつまでも景色を楽しんでいた人達
この人達が座っている岩の高さは、ゆうに5m以上はあるのです。私は、この写真を撮るのでさえ、結構、怖かったのですが・・・( ̄ー ̄;。
こんなところにも・・・
こんなところに座っている人もいました。その向こう側は、50m以上の断崖絶壁です w(*゚o゚*)w。