本丸虎口
関東管領の信任厚き長尾景仲が築いた城も、上杉、北条、武田各氏の抗争の波に
所在地
群馬県渋川市白井（旧子持村）
形状
崖城
現状・遺構
遺構等：曲輪、土塁、石垣、空堀、堀切、虎口、碑、説明板
満足度
★★★★☆
訪城日
２００６／０９／３０
歴史等
いつ頃築かれたかは諸説あるが、１５世紀中頃に関東管領山内上杉憲実の信任が厚かった長尾景仲（昌賢）によって築かれたと考えられる。
景仲は月江正文禅師を開山とする曹洞宗・雙林寺（そうりんじ）や「白井の聖堂」と呼ばれる学問所を開いたことでも知られる。
この城も関東地方の他の城郭同様、上杉、北条、武田各氏の抗争の波に揉まれた歴史を有する。
山内上杉が川越夜戦で敗退し、北条氏に圧される頃になると本城が拠点となった。その後、上杉氏の名跡を上杉謙信が継ぐと、
上杉謙信の関東出陣の拠点となり、さらに武田氏の上州へ侵攻後は、真田幸隆が奪ったり、北条氏が奪回したりが繰り返された。城主の長尾氏も、
このため上杉氏－武田氏－上杉氏－北条氏－滝川氏－北条氏と、ころころ主を変えた。
そして、天正１８年（１５９０）に豊臣秀吉の小田原攻めの際、前田利家に攻略されて開城し、戦国の城としての役割を終えた。
その後は、徳川家康の関東入りにしたがい本多広孝・康重が城主（２万石、のち５万石）となり、この頃に現在の姿に整備されたと考えられる。
康重が三河岡崎へ移封後は、
戸田康長－井伊直孝－西尾忠永－本多紀貞と続くが、寛永元年（１６２４）紀貞の病没とともに廃城となった。
これら以後の経過は明らかではないが、少なくとも明治時代以降は農地化されていたと思われ、
昭和４０年代の土地改良事業においても大幅な地形の改変はなく、堀や土塁など城としての地形が良く残っている。
『「現地説明板」参照』
現況・登城記・感想等
平成の大合併により、最近、伝統ある地名やユニークな地名が次から次へと失われていく。
この白井宿や白井城址のある子持村もそのひとつである。２００６年２月２０日に渋川市他との合併により、
子持村白井から渋川市白井という何の変哲もない地名になってしまった。
さて、白井城址であるが、山麓の白井宿は小川を挟んで道があり、その両側に宿が並んでいたのであろう。今も、
その道の真ん中に井戸が残っていたり、何とも風情がある。
白井城址へは、そこから背後の山への坂道を登りきった所を左に行くと、今は城山不動尊となっている北曲輪の櫓台に出る。さらに奥に行くと、
二の丸と三の丸間の空堀に出会うが、その堀が実に良好な形で残っているのにまず感激する。
そして、次に本丸の枡形虎口の荒々しい野面積みの石垣と高い土塁とその手前の土橋の両側の深い堀にまたまた感激する。
ここからの見る雰囲気が実に素晴らしい。
本丸へ入ると、これがまた実に広い。そして、その周囲を囲む土塁の素晴らしさ・・・。本丸をさらに奥に入って行くと、
そこから眼下に見える吾妻川と渋川市街、そしてその向こうには山並みとさらに一段高い山が薄っすらと見える。それが榛名山らしい
（残念ながら、薄くて写真には写らないようである）。
本丸周囲を囲んでいる土塁の上を歩くと、特に北側の土塁の高さと堀の深さにまた感激。予想以上に素晴らしい城址であった。
（2006/09/30登城して）
ギャラリー
白井宿
昔の宿場町の名残りがあり、今なお、風情がある。右写真は薬師塔と薬師井戸。
白井城址の主郭付近の図 ～クリックにて拡大画面に～
北曲輪の櫓台
坂を登りきって左の道へ入ると最初に出会う。今は、城山不動尊となっている。
三の丸と二の丸間の東側空堀（左）と西側空堀（右）
非常に良好な形で残っており、まずここで感激。右側写真の二の丸の周りは一段低くなっていたが、帯曲輪跡？
二の丸（二の丸・三の丸・北曲輪にかけてはほとんどが農地になっている）
本丸虎口（ここからの雰囲気が最高に素晴らしい）
本丸手前の西側へ伸びる空堀
相当な深さの堀が、山の端まで続いている。西端は吾妻川の断崖（約３０ｍ）になっている。
虎口土塁の上から見た本丸虎口 ～左写真はクリックにて拡大画面に～
写真で見ると、あまり高低差が分からないが結構なものである。
本丸虎口付近の土塁
この辺りの土塁が最も高く、土塁向こうの空堀は本当に深く掘られている。
本丸西方面（左）と東方面（右） 相当な広さである。
本丸からの眺望（左）と本丸土塁上からの眺望（右）
眺望が素晴らしく、山並みの向こうには、榛名山が薄っすらと見えたが、残念がら写真には写らなかった。
笹曲輪（本丸南の低い削平地が笹曲輪跡）
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