トームペア城(タリン市)

トームペア城(現国会議事堂)正面

エストニア人の砦があった場所に、13世紀前半に騎士団により築かれた城

エストニア語名

Toompea loss

所在地

エストニア ハリュ県 タリン

歴史等

トームペアとは、石灰岩でできた崖のような小高いところを指し、防御に適していたことから、少なくとも11世紀にはエストニア人による城砦が築かれていた。
しかし、バルト地方で十字軍騎士団の動きが活発になると、これに呼応したデンマーク王によって、1219年に砦は征服され、デンマークの新しい植民地の拠点と戦争に備えての要塞となり、補強と改築が行われた。
1227年に帯剣騎士団が勢力を握ると塔を持つ、四角い形をした小さな要塞を築いた。
10年後には、再びデンマーク人が勢力を握り、1343年のエストニア人による反乱「聖ゲオリギウスの夜」までトームペアをはじめ、タリン、北部エストニアを支配した。
1347年、タリンがドイツ騎士団の傘下のリヴォニア騎士団に売り渡されると、リヴォニア騎士団は防衛のため建築物を強化し、4つの翼を持ち、中心に四角形の中庭を持つ建物が建てられた。城壁の角には「のっぽのヘルマン塔」をはじめ4つの塔が建てられた。
時代は下って、1710年、タリンとエストニア国の騎士団はロシアに降伏し、1917年までロシア帝国により統治された。そして、1767年から1773年にかけて、ロシア帝国の女帝エカテリーナ2世の命令で知事官邸が建設されると、城壁の大部分が壊され、城の正面はバロック様式のものとなり、要塞としての外観を完全に失った。
『「現地購入誌・タリン」他参照』

現況・登城記・感想等

タリン旧市街は、約2.5kmの城壁に囲まれた城塞都市です。その旧市街は、支配者や貴族たちが居を構えた山の手の「トームペア」と、商人や職人たち市民が住んだ下町に分かれています。
「トームペア」は、標高47m、比高24mほどの高台で、西側と北側は急崖、東側も下町との比高差が大きく、南側は切岸と濠で守られた要害で、さらに、周囲を強固な城壁で囲まれています。
初めてエストニアの首都タリンに到着し、タリン市街の北にあるタリン港からトームペア城の西麓にあるホテルまで、バスの窓からタリン旧市街西側半分を眺めた限り、随分平坦な地で、唯一、トームペアの丘だけがちょっとした高台にあるかな程度に思っていました。
ところが、トームペア城の西側の高い城壁、さらにはその下の急崖を見た時、その考えは一変し、まさに難攻不落の要塞だと考えを改めました。
尤も、一般的に「トームペア城」とは、「トームペア」の南西部に建つ現国会議事堂の建物を指すようで、正面(東側)から見ると、それは要塞というより宮殿と呼ばれるべきでしょうが・・・。
(2015/06/19、06/24登城して)

ギャラリー

タリン旧市街絵図(現地購入誌・タリンより) ~画面をクリックにて拡大~
①トームペアの小さな要塞、②トームペア城、③のっぽのヘルマン塔、④大統領官邸、⑤騎士の館、⑥旧市庁舎、⑦大聖堂、⑧オレヴィステ教会、⑨ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会、⑩ニグリステ教会、⑪聖霊教会、⑫キリストの変容教会、⑬ニコライ聖堂、⑭アレクサンデル・ネヴスキー大聖堂、⑮ドミニコ修道院、⑯スウェーデン・ミヒケル教会、⑰キーク・イン・デ・クック(博物館)、⑱太っちょマルガレータ塔(海洋博物館)、⑲長い足の門塔、⑳馬小屋の塔、㉑乙女の塔、㉒シュトルティング塔、㉓修道女の塔、㉔サウナ塔、㉕黄金の足の塔、㉖修道女の後ろの塔、㉗ルーベンシューデ塔、㉘縄の丘の塔、㉙ブラーデ塔、㉚エッピング塔、㉛グルスベケタグネ塔、㉜ヴィル門、㉝大海門、㉞短い足の門塔、㉟大ギルド会館(歴史博物館)、㊱カヌート・ギルド会館とオレヴィステ・ギルド会館、㊲ブラック・ヘッドギルド会館、㊳市議会薬局、㊴商人の住居(タリン歴史博物館)、㊵商人の住居(タリン市立劇場)、㊶貴族の館、㊷デンマーク王の庭、㊸馬引き製粉所、㊹三姉妹
タリン市街図

トームペア絵図(タリン旧市街南西部山の手地区) ~現地購入誌・タリンより~
トームペア絵図

【登城記】
一般的に、「トームペア城」とは、「トームペア」の南西部に建つ現国会議事堂の建物を指すようですが、ここではトームペア全体を城域として紹介したいと思います。
のっぽのヘルマン塔(Pikk Hermann)
トームペア城の南側のFALGIE TEE通りを東の方へ登って行くと左手前方に「のっぽのヘルマン塔」が見えて来ます。「のっぽのヘルマン塔」は、1370年代にトームペアの騎士団の要塞の再建時に、城の南西角に建てられました。この高さ50.2mの塔は、エストニアの権力の象徴であり、常に支配者の旗が掲げられてきました。1989年からは、毎朝、日の出の時間に、エストニアの青黒白の国旗が掲揚されています。。
のっぽのヘルマン塔

トームペア城とのっぽのヘルマン
トームペア城の南側を走るFALGIE TEE通りから撮ったものです。城壁や塔はともかく、ピンク色の綺麗な建物は、城というより宮殿ですね。
03ト-ムペア城

トームペア城正面
この王宮のようなバロック様式の優雅な建物は、18世紀後半にロシア帝国の女帝、エカテリーナ2世の命令で建てられました。ロシア帝国時代は知事官邸として使われ、現在は国会議事堂になっています。
06トームペア城正面

西面の城壁
城の東側からは要塞の面影はありませんが、西側の城壁は15世紀頃の面影がよく残り、まさに難攻不落の要塞です。
06城壁

西面の城壁②
西面は城壁だけでなく、その下も急斜面の崖になっており鉄壁の防御です。

09トームペア城5

西面の城壁とのっぽのヘルマン塔
西面の城壁とのっぽのヘルマン塔

西面の城壁とランスクローネの塔
往時は、トームペア城には4つの塔が建てられたが、現在は、のっぽのヘルマン塔をはじめとし、この「ランスクローネの塔」と、この奥(東側)にある「ピルシュディッケルの塔」の3つの塔が15世紀当時の姿をとどめています。
西面の城壁とランスクローネの塔

キーク・イン・デ・キョク
トームペアの南東端には、高さ49.4m、直径17m、壁の厚さ4mの砲塔「キーク・イン・デ・キョク」が聳えています。15世紀末に町の防御のために造られ、16世紀初めに補強されました。外壁には9つの銃弾が埋まっています。
名前の意味は、低地ドイツ語で「台所をのぞけ」という意味で、かつてこの上からは下町の家々の台所が手に取るように覗き見えたのだそうです。現在は博物館として使われています。

キーク・イン・デ・クック

乙女の塔
キーク・イン・デ・キョクの北約50mほどのところに、両側に城壁を従えるように、14世紀に造られた塔「乙女の塔」が修復・現存しています。背後にはニグリステ教会(聖ニコラス教会)の尖塔が見えます。左奥には「馬小屋の塔」が見えます。
乙女の塔とニグリステ教会の尖塔

乙女の塔とアルクサンデル・ネヴスキー大聖堂
城壁に向かって歩いて行くと、乙女の塔の左奥にアレクサンデル・ネヴスキー大聖堂が見えますが、このコラボがなかなかです。乙女の塔の下にはトンネルのようなのがありますが、城壁が一部崩れたものでしょうか?
35塔

堀底道
トンネル?をくぐると、そこは堀底道です。両側の城壁とも、なかなか堅固です。
堀底道

馬小屋の塔と門
右の塔は、現地購入誌の旧市街絵図と見比べてみると「馬小屋の塔」のようですが、何故、そのような名前なのか分かりません(/。ヽ)。塔の左下の門をくぐって行きます。
39城門

デンマーク王の庭(手前の塔は乙女の塔、左奥はキーク・イン・デ・キョク)
門をくぐると、「デンマーク王の庭」へ出ます。庭は、それほど広くはありません。「乙女の塔」は何度も建て直され、19世紀初めには芸術家たちの住まいになったそうですが、1968年から1980年の間に、完全に修復され、眺めの良い美しいカフェ「乙女の塔」になっているそうですが、残念ながら、早朝のため閉店でした(/。ヽ)。41デンマーク王の庭

デンマーク王の庭(右の塔は馬小屋の塔)
馬小屋の塔のところから、城壁の上へ登れるようでしたが、これまた早朝で・・・(/。ヽ)。
43デンマーク王の庭

騎士の館(現エストニア国立美術館)
かつて貴族や聖職者たちの居住地であったトームペアには、美しい貴族の邸宅が残っています。18世紀には騎士たちの住居として幾つかの館が建設され、今日でも残っています。
騎士の館

アレクサンデル・ネヴスキー大聖堂
トームペア城の真ん前にはロシア正教のアレクサンデル・ネヴスキー大聖堂が建っています。エストニアはプロテスタントが多いようですが、ロシア正教もかなりの人が信仰しているようです。
ロシア正教会

大聖堂
アレクサンデル・ネヴスキー大聖堂の北約100mほどにはプロテスタントの大聖堂があります。
大聖堂

トームペア北端の展望台からの眺望
トームペアには展望台が4ヶ所ほどあります。私は、3ヶ所行きましたが、丘の北端、大統領官邸脇にあるこの展望台と北東端にある展望台が下町の光景とタリン港が見えてお薦めだと思います。
当展望台からは、赤い屋根が建ち並ぶ家々、教会の尖塔、さらには城壁に建ち並ぶ塔がよく見えます。
 
53眺望

トームペア北東端の展望台からの眺望
51眺望

トームペア北面の城壁と大統領官邸
トームペアの北面も凄い急崖と強固な城壁で防御されているのがお分かり頂けると思います。右上の建物が大統領官邸です。また、左上が、トームペア北端の展望台です。
55城壁と大統領官邸


トームペアの西下には、広い水濠が残っています。写真中央上の建物は大統領官邸。
濠

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