武蔵 小倉城(ときがわ町)

郭3の石垣

結晶片岩の石垣等の遺構がよく残る中世山城

読み方

おぐらじょう

所在地

埼玉県比企郡ときがわ町田黒608
(旧:埼玉県比企郡玉川村大字田黒字城山1184)

形状

山城(標高140m、比高71m)

現状・遺構等

現状:山林(国指定史跡)
遺構等:曲輪、空堀、堀切、二重堀切、石垣、土塁、井戸、石碑、説明板

満足度

★★★☆☆

訪城日

2007/02/25

歴史等

小倉城は標高140mの山上にある典型的な山城である。 城下は槻川の曲流により画され東北西の三方は断崖をなし要害な位置を占めている。城の形状は細長く南北約360m、東西110mある。 本丸を中心に8つの出曲輪をつくり各曲輪の塁壁は5~6mをなし本丸と二の丸には高さ1~3mの土塁をめぐらしている。 また基盤を掘削した空堀も残存している。
築城年代は不詳であるが、おそらく鎌倉街道の押さえとしての役割を持っていたと考えられる。戦国時代の元亀・天正(1558~1591) の頃、後北条氏の部将・遠山光影の居城となったが、天正18年(1590)豊臣秀吉の小田原攻めの時に、 武蔵松山城などともに落城したものと云われる。
尚、江戸時代の諸記録では、「新編武蔵風土記稿」には後北条氏遠山氏、「武蔵誌」 では比企戦国史で重要な地位を占めた上田氏を城主としているが、最新の発掘調査による城跡の年代推定は16世紀前半~後半と判明している。
『以上、現地説明板、石碑より』

現況・登城記・感想等

小倉城は、主郭(郭1)を中心に郭・土塁・石垣・空堀等の遺構がよく残っている。
主郭は山城としては、かなり広く、北東部の3分の2ほどが、1.5~2m強ほど高くなっており、2~4mほどの土塁で囲まれている。
また各郭の土塁は外側からは5m~6mほどの高さがあり、それぞれの郭への虎口が明確に残っている。 特に両側土塁の高さが4m近くある主郭南西の虎口は明瞭に残り、北東部の虎口には石積みがよく残っている。
しかし、何といっても当城址の一番の特徴は、関東地方の中世山城には珍しく、郭腰部等の多くに石積み(石垣) が設けられていることであろう。冬のため、落ち葉で相当埋もれてしまっているが、 郭腰部の大部分が石垣で被われているのではないかとさえ思われる。その石垣は長野県の山城(ex.松尾古城等) によく見らる平石の石積みのように、平ぺったい石が積まれている。特に、郭3腰部や主郭東下の腰郭腰部の石垣は良好に残っている。
ただ、この城の石垣は如何にも脆そうな石で、この山の基盤層の石で結晶片岩だという。
また、各所に残る空堀や堀切も見所のひとつであろう。特に、主郭東南下の郭3との間の岩盤を掘削した深さ4m近くもある堀切は圧巻である。
(2007/02/25登城して)

会社OB会の同好会「カルチャー雅会」で菅谷館を探索することになり館跡内にある埼玉県立嵐山史跡の博物館内に小倉城のパンフレットがあり、小倉城復元想像図が掲載されていたのでその想像図を追加掲載しました。
さらに、そのついでに写真が小さかったので大き目の写真に変えました。
(2020/10/17)


【結晶片岩】
結晶片岩とは、いろいろな岩石が高い圧力によって変成を受けた岩石で、平行に薄く割れやすい。「緑泥片岩」や「石墨片岩」などがある。
その中で、緑泥片岩は「紀州の青石」として有名である。和歌山城周辺では紀ノ川南岸以南に分布しており、 和歌山城の築城初期から使用されている。また、徳島城にも使用されている。
小倉城の石垣も緑泥片岩らしいが、私見としては、和歌山城の緑泥片岩はもっときれいな緑色で硬そうで、この城の石のようには脆そうではない。小倉城の石積みの石はどちらかというと北海道の積丹半島等でよく見られる脆い石(2度ほど落盤事故があった)に似ているような気がした。

ギャラリー

小倉城縄張図(現地説明板より)~画面をクリックにて拡大画面に~
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小倉城跡復元想像図(埼玉県立嵐山史跡の博物館パンフより)
~画面をクリックにて拡大画面に~
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小倉城跡入口と登城道
小倉城入口から小倉城址と青山城址への分岐点までの道は、「深山幽谷の中を歩く」といった趣きがある。

小倉城と青山城登城道の分岐点と郭4の土塁
分岐点から小倉城方面へ少し登ると、いきなり郭4の土塁が見えて来る。

郭4の虎口
そして郭4への虎口を入る。
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竪堀
なおも進んでいくとかなり大規模な堀切(竪堀)が現れる。
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郭2と郭2に立てられた小さな石碑
郭2は細長い郭で、土塁に囲まれていたようである。可愛らしい小さな、小倉城の石碑が置いてあった。

主郭西虎口(郭2から主郭への虎口)
郭2から主郭への虎口の土塁の高さは4m近くあるのではと思われる。
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主郭
主郭は山城としては、かなり広く、北東部の3分の2ほどが、1m強ほど高くなっており(写真奥)、2~4mほどの土塁で囲まれている。
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主郭に建つ石碑
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主郭北東の虎口
この虎口は石積みがよく残っている。
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主郭東の虎口土塁とその土塁を上から撮影

主郭東南の郭3との間を断ち切る堀切
主郭東南下の郭3との間にある、岩盤を掘削し、深さが4m近くもある堀切は圧巻である。
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郭3の石垣
土嚢でかなり補修されているが、この郭3は勿論のこと、小倉城の大部分は石垣造りだったのでは?TOPの写真も、この郭3の石垣である。
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主郭東下の腰郭の石垣
この櫓台のような石垣もよく残っている。
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コメント

富岡武蔵(2008/05/06)

5月に入ってときがわ町の小倉城へ出かけ、二度目ですが良く見てきました。本丸の東下腰曲輪の虎口や三の丸の南外壁に結晶片岩というのですか、石積みが良く残っていますね。自分の記憶では埼玉の山城でこの石版状の石を使用したところはないと思いますが他にありますか?また発掘調査というのは遺物での判断でしょうから16世紀については懐疑的に思っています。

タクジロー(2008/05/08)

武蔵さま
ご無沙汰しております。
昨夜(5/7)遅く実家のある四日市から帰ってきました。
ついでに岐阜と三重の城めぐりにも行ってきました。
残念ながら、岐阜の城は雨天で、今回の本命の城へは行けませんでした。
三重では、久し振りに本格的な山城へも登りましたが、今の所、不安の腰も大丈夫なようで、ほっとしています。
小倉城の結晶片岩のひらぺったい石垣ですが、埼玉県では、私もここだけだと思います。
また、16C云々ですが、確かにその通りだと思いますね。

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