美作 矢筈城(津山市)

矢筈城西郭群の堀切

秀吉や宇喜多氏による度々の攻撃でも落城しなかった難攻不落の城

読み方

やはずじょう

別名

高山城(こうやまじょう)、高山南城、草刈城

所在地

岡山県津山市加茂町山下、知和
【アクセス】
登城口は西麓の千磐神社(登城口1)と北麓の「美作河井駅」(登城口2)の2つあり、いずれも駐車場完備しているが、美作河井駅側からは途中に見どころが少ないので、千磐神社から登るのをお薦めします。
千磐神社からの登城口へは、JR知和駅を右手に、県道6号線を約800mほど東進すると、右手に千磐神社があり、その下に駐車場があります。尚、登り口には縄張図付きのパンフレットが置かれていて有難いです。

所要時間

登城口から本丸跡まで(2.4km)遺構を見ながらですが1時間40分、下山も1時間近く掛かりました。私の今回の見学時間は3時間強でした。

形状

山城(標高756m、比高426m)

現状・遺構等

【現状】 山林
【遺構等】 曲輪、土塁、石垣、櫓台、狼煙場、竪堀、堀切、井戸、石碑、説明板

満足度

★★★★★

訪城日

2013/11/23

歴史等

矢筈城は、天文元年(1532)から天文2年(1533)にかけて尼子氏の部将草苅衡継が築城した。
草苅氏は、元々、陸奥郡斯波郡草苅郷(現岩手県紫波郡紫波町草刈附近)の出身で、南北朝期の暦応年間(1338~42)に、足利尊氏から因幡国智頭郡(現鳥取県八頭郡智頭町)を与えられ因幡淀山城に移り住んでいたが、第11代衡継の時の天文2年(1533)矢筈城に移った。
永禄2年(1559)、城を継いだ衡継の子景継は勢力の衰えた尼子氏を離れ毛利氏についたが、天正2年(1574)には織田信長の勢力を恐れ、密かに織田方についた。
しかし、小早川隆景の知るところとなり翌天正3年(1575)に、景継は自刃し、弟重継が跡を継ぎ毛利氏に忠節を誓った。
このため、天正7年(1579)から天正9年(1581)にかけて、矢筈城は、宇喜多氏や秀吉等の軍勢から度々攻撃されたが、そのつど撃退した。
天正10年(1582)、備中高松城攻め後、毛利氏と秀吉の和議によって、美作国における毛利氏の属城は秀吉(宇喜多氏)明け渡すことになったが、美作の国人層は反発し、重継も抵抗を続けたが、毛利輝元や吉川元春からの要請によって、ついに天正12年(1584)開城、廃城となった。
『「パンフレット」、「日本城郭大系13」他参照』

現況・登城記・感想等

矢筈城は、東西1,600m、南北500mの壮大な山城で、岡山県内でも最大の中世山城で、標高756mという全国でも屈指の高地にあり、比高も426mあり、非常に険しい要害の地にある。
城の縄張りは、本丸・二の丸・三の丸を中心とする東郭群(古城)と、成興寺丸や御殿を中心とする西郭群(新城)から構成する一城一郭式の城です。
登城して、まず感じるのは「兎に角、険しい城」であるということで、西郭群のある尾根上(西尾根曲輪)まで、急な坂道をひたすら登り続けることになります。
西郭群には、土塁・堀切・櫓台・石垣、さらには三重堀切が次々と現れ、嬉しくなってきます。
ところが、ここまで折角登ったのに、ここで一旦下り坂になり、その向こうに切り立った山が見えて来ます(/。ヽ)。それが本丸がある東郭群です。
東郭群の方は、段曲輪になっており幾つもの小さな曲輪を超え登って行くと、三の丸・二の丸へ出ます。そして、二の丸の上に見える山頂部が本丸跡です。本丸への最後の道の左側は、強烈な崖で怖いほどです。
本丸からは、360度のパノラマが楽しめ、気持ちがいいです。これまでの城めぐりでも、素晴らしい眺望が望める多くの城跡はありましたが、ここが最高かもしれません。
当城は、見どころが多い上、登城時間もしっかり掛かるので、全てを見るには3時間半ほど掛けて廻りたい城跡です。
(2013/11/23登城して)

ギャラリー

矢筈城縄張図(パンフレットより) ~画面をクリックにて拡大画面に~
矢筈城の縄張りは、本丸・二の丸・三の丸を中心とする東郭群(古城)と、成興寺丸や御殿を中心とする西郭群(新城)から構成する一城一郭式の城です。
矢筈城縄張図

【登城記】
堀切
登り始めて5分もすると堀切が現れます。右手土塁上は、結構広くなっています。
01堀切

急坂道
ここからは、急坂道をひたすら登って行きます。
03登城道

大岩
30分ほど登ると、大岩が現れます。物見・監視をした、いわゆる物見岩でしょうか? 縄張図を見ると、この辺りからが城域に入るようです。 
05大岩

武者隠し
大岩から3分ほど進むと前方に土塁が現れますが、武者隠しだとのことです。まあ、何人かの武者が隠れることはできるでしょう。
07武者隠し

急坂道
武者隠からは、さらに道が険しくなります。
09登城道

西尾根曲輪 
武者隠しから険しい坂道を登ること、5分程で尾根上の平坦地へ出ます。西尾根曲輪です。
11成興寺丸

腰曲輪(成興寺丸)
西尾根曲輪の左(北側)下には腰曲輪(成興寺丸)が設けられています。成興寺は草苅氏の菩提寺であったようです。尚、成興寺丸の下にも段曲輪があるようです。 
13腰曲輪

虎口(伝城門)
西尾根曲輪を東の方へ向かって歩いて行くと左側に石組みになった虎口(伝城門跡)があります。恐らく、北西麓にある居館から通じる大手口だったのでしょう。ところで、他の山城でもそうですが、虎口下は急崖で、一体、こんな所からどうやって登って来るのかいつも疑問に思います(苦笑)。
15虎口

土塁
西尾根曲輪をさらに東へ進むと土塁があります。土塁の向こうは、明らかに堀切です。
17土塁

堀切
土塁の向こうは、やはり堀切でした。西尾根曲輪は、この堀切で2段に分かれています。下段側には土塁、上段側(写真右)には櫓台が設けられています。櫓台には一部石積みが確認できます。
19堀切

櫓台と狼煙場
櫓台の内側には狼煙場跡があります。
20櫓台と狼煙場

櫓台?
狼煙場から、さらに西尾根曲輪を東へ向かうと、一枚岩のような土壇が行く手を塞ぎます。パンフなどにも説明がないので分かりませんが、防御上の何らかの施設があったものと思われます。
21巨岩

腰曲輪(客殿と城主居館)
西尾根曲輪をさらに東へ向かうと、正面には小郭が現れ、左前方(北東)下に腰曲輪が見えます。手前の低い段が「客殿」で奥の高い段が「御殿(城主居館)」の跡です。
25客殿と居館

小郭
小郭は石垣段の下にあり、東西10間(約18m)、南北4間(約7m強)の広さです。 
23小郭

石垣段
27石垣段

石垣
石垣段近く、北面には明瞭な石垣も確認できます。 
石垣


石垣段の東には、パンフレットの縄張図では、ただ「郭」と称される東西27間(約49m)、南北8間(約14.5m)の平坦地があります。
郭

石垣段
郭の東端にも石垣段があります。パンフレットには全面石垣となっていますが、あまり明瞭ではありません。
29石垣段

三重堀切①
石垣段の東側には三重堀切があります。ここから、ぐっと下りになります。
31三重堀切

三重堀切②
三重堀切の2番目の堀切ですが、一緒に付き合ってもらったT本さんとの比較から、その高低差が分かって戴けるかと思いますが、かなりのものです。
33三重堀切2

三重堀切③
三重堀切の3番目の堀切脇から撮ったものです。
34三重堀切

矢筈山山頂(本丸)を望む
三重堀切からは、しばらく下り坂が続きますが、前方に切り立った山が見えて来ます。山頂部に本丸があります。折角、登って来たのに、一旦、下るのが悔しいです(苦笑)。
36矢筈山

鞍部
下り坂を下りると、西郭群(新城)と東郭群(古城)を区分する鞍部へ出ます。鞍部は、浅くなっていますが、二重堀切になっていたようです。
37鞍部

登り坂
鞍部からは一気に比高100mほどの急坂を登ることになります。
38登り坂1 38登り坂2

堀切
鞍部から登り始めて3~4分ほどすると堀切に出ます。
39堀切

竪堀
堀切は、竪堀となって山裾に延びて行っています。
40竪堀

三の丸
さらに6~7分ほど登ると、三の丸へ出ます。三の丸は、東西13間(約23.5m)、南北6間(約11m)の広さで、L字型をした岩盤を利用した土塁(写真右)が残っています。正面奥の高台上が二の丸です。
41三の丸

二の丸
二の丸は東西22間(約40m)、南北10間(約18m)の広さで、東郭群では最も広い郭です。この辺りの紅葉が綺麗でした。正面奥の山の上が、いよいよ本丸です。二の丸は、西郭群からの道と土蔵郭や馬場のある北尾根筋との合流点になる。
43二の丸

竪堀
二の丸と本丸との接合部は、断崖絶壁の崖が食い込んできていて狭くなっている。その崖は、竪堀となって山裾へ落ちて行っているが、竪堀というより、ほぼ完全に垂直の崖で、見下ろすのも怖いほどです。
45二の丸竪堀

本丸腰曲輪
本丸へ登って行く途中には腰曲輪が確認できます。
47本丸腰曲輪

本丸
本丸の広さは、東西15間(約27m)、南北6間(約11m)の不整形ですが、往時は山頂部分からはみ出して懸け造りをしなければならないような大きな建物があったと伝えられるそうです。
ただ、周囲は断崖絶壁なので、床下の柱の基台が何処に求めたのか、私には皆目見当が付きません( ̄ー ̄;。

51本丸

本丸からの眺望
本丸からは、360度のパノラマが楽しめ、気持ちがいいです。これまでの城めぐりでも、素晴らしい眺望が望める多くの城跡はありましたが、ここが最高かもしれません。
私の城めぐりでは、人に逢うことは滅多にないのですが、今日は2組のハイカーに出逢いました。それも、このパノラマを見れば納得できるというものです。
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