ヴァレッタ市街とを断ち切る空堀の向こうに聖エルモ砦を
オスマン軍の攻撃に備えて聖ヨハネ騎士団によってシベラス半島先端に築かれた城砦
英語名
Fort St.Elmo
所在地
マルタ共和国ヴァレッタ
形状
稜堡式城郭
訪城日
2016/05/18
歴史等
聖エルモ砦は、既に15世紀から軍事戦略上の重要防衛拠点でしたが、実際に砦が建設されるのは1552年のことで、守護聖人聖エルモの小さな礼拝堂があった場所に建設された砦なのでこの名前がつけられました。
1530年聖ヨハネ騎士団(後のマルタ騎士団)が、マルタ島に上陸した際、差し迫ったオスマン帝国の侵攻から防御するために、岩が多く険しいシベラス山(現ヴァレッタ)を要塞化しようと考え、まずシベラス半島の先端に僅か6ヶ月で4つの角を持つ星型の砦(聖エルモ砦)を築きました。
ところが、ヴァレッタ全ての城塞化が未完成な1565年5月18日、オスマン帝国によるマルタ包囲戦が始まりました。オスマン軍の最初の目的は、大艦隊の安全な足場を確保することであり、そのため聖エルモ砦に攻撃を仕掛けました。31日間にわたる抵抗の末、聖エルモ砦は遂に陥落しました。
しかし、この砦で必死に抵抗したことによりシチリアからの援軍が間に合い、聖ヨハネ騎士団はオスマン軍を撃退することに成功しました。
『「現地購入誌・マルタ」、「地球の歩き方・南イタリアとマルタ」他参照』
現況・登城記・感想等
聖エルモ砦はシベラス半島の先端にあり、対岸のリカゾーリ砦とでグランドハーバー湾の入口を挟み込むようにして敵艦がグランドハーバー内へ入れないように防御しています。
ヴァレッタ市街とを断ち切る空堀や城壁がジグザグに築かれていることから、元々は星形の稜堡式の城郭であったのがよく分かります。
現在は、城郭の東側の一部は取り壊されて建物礎石が残っているだけですが、西側部分は戦争博物館となっている部分とともに良好に残っているようです。
今回は、時間不足のため、砦と戦争博物館の周囲を廻ることしかできませんでした。それでも、今尚、軍事要塞の趣きが残っているのが実感できました。とはいえ、入城できなかったのは何とも残念無念(;>_<;)。
尚、砦先端部から眺める対岸のリカゾーリ砦の姿もかっこ良かったです。
(2016/05/18訪れて)
ギャラリー
ヴァレッタの防御のために築かれた各砦の位置
ビルグ半島(現ヴィットリオサ市街)の先端に位置する「聖アンジェロ砦」の強化をし、同様に新たな2つの砦、隣のセングレア半島に「聖ミケーレ砦」、シベラス半島(現ヴァレッタ市街)の突端には「聖エルモ砦」を新規に建設しました。2つの砦はわずか6ヶ月で完成、後のオスマン帝国によるマルタ包囲戦において防衛の要となりました。
最初に出逢う大空堀
今回のヴァレッタ訪問中に是非登城したかったのが、この「聖エルモ砦」です。ヴァレッタ市街で与えられたフリータイムは約1時間。大急ぎで廻れば、城内観光も可能かもしれないので、大急ぎでヴァレッタ市街中心部から聖エルモ砦のあるシベラス半島先端部へ向かいました。すると大規模な空堀が現れました。幅10m強、深さも10m近くあるでしょう。空堀には橋が架かっていますが、当然、これは後世のものです。
空堀はジグザグになっていることから、聖エルモ砦が稜堡式の城郭であるのがよく分かります。
空堀の向こうに聖エルモ砦を
建物礎石と聖エルモ砦城壁
空堀を渡ると聖エルモ砦へ出ますが、東側部分は石畳と建物礎石だけが残っています。尚、写真左側に門がありましたが、ここから入城は出来ず、入城口を捜したのですが、なかなか見つからず、時間が刻々と進んでいき、焦りが・・・( ̄ー ̄;。
尚、礎石は、直径2m近くある大きなもので、往時は相当立派な建物が建てられていたことが想像できます。
監視塔?
さらに半島先端部へ向かうと監視塔らしき建物が建ち、その脇の道を入って行くと砦内へ行けるようですが、その入口が分かりません。その後、当写真の手前へ100~150mほど坂道を下りて行ったところに入城口を見付けたのですが、残り僅かな時間しかなく、入城は諦めて、砦の周囲を見て廻るだけになってしまいました(/。ヽ)。
リカゾーリ砦を望む
聖エルモ砦から、グランドハーバー入口の対岸にはかっこいいリカゾーリ砦が見えます。リカゾーリ砦は、17世紀の後半に造られた砦で、聖エルモ要塞と共にヴァレッタの重要な拠点となっていました。これだけ狭い海峡の両側にこんな要害堅固な砦があったら、敵艦がここを通り抜けるのは至難の業でしょう。まさに鉄壁の構えです。
城壁
聖エルモ砦の西側の、現在、戦争博物館として利用されている建物の城壁です。その向こうにはマルサイムシェット・ハーバーが広がります。
マルサイムシェット・ハーバー
半島の西側には、これまたグランドハーバーと同様、重要な港「マルサイムシェット・ハーバー」があります。こちら側も、対岸にあるスリーマ(写真右奥)やマヌエル島(写真左奥の島)の 「マヌエル砦(Fort Manoel)」とで取り囲んでおり、これまた鉄壁の構えです。