虎口と土塁
旧幕府軍による昼夜兼行での築城も、新政府軍の攻撃で数時間で陥落
別名
新台場、神山台場
所在地
北海道函館市陣川町59
形状
稜堡式平城
現状・遺構等
現状:史跡(国指定史跡)
遺構等:土塁、虎口、空堀、砲座跡、石碑、説明板
【国指定史跡】
指定日:昭和9年1月22日
指定理由:明治維新の箱館戦争の際に洋式築城法により急造された堡塁跡。
面積:約2万1,500㎡
満足度
★★★☆☆
訪城日
1999/05/01
2012/08/01
歴史等
明治元年(1868)に五稜郭を占拠した旧幕府榎本軍は松前方面の攻略に成功し、蝦夷地を平定していたが、翌明治2年に入り、新政府軍の攻撃により、次第に箱館方面に後退することとなった。
五稜郭に立て籠もる旧幕府榎本軍は新政府軍の攻撃に備えて各地に防御陣地を築いたが、五稜郭の背後を固めるため、また、箱館近郊が一望できる高台に防御施設が必要となった。
このため4月下旬、五稜郭の北方約3kmの緩斜面台地に、旧幕府軍兵士200人と付近の住民100人を動員して昼夜兼行の工事により堡塁を築いた。これが四稜郭で設計者は大鳥啓介と云われる。
同年5月11日、新政府軍(長州藩、備前岡山藩、備後福山藩)は箱館総攻撃を開始し、同日未明、岡山藩・徳山藩(長州藩の支藩)の藩兵は赤川村を出発し、四稜郭の攻撃を開始した。
松岡四郎次郎率いる旧幕府軍は四稜郭の防御に努めたが、新政府軍には福山藩も加わり、さらに長州藩兵が四稜郭と五稜郭の間に位置する権現台場を占領したため、退路を断たれることを恐れた旧幕府軍は五稜郭へ敗走し、わずか数時間で陥落した。
そして、5月18日には、五稜郭が開城され、榎本武揚以下が降伏して箱館戦争は終わった。
『「図説・日本の史跡7(同朋社刊)」、「現地説明板」より』
現況・登城記・感想等
四稜郭跡は函館市中心部から近く、宅地開発が進んできてはいるが、四稜郭跡の周囲は多くが畑地や雑木林になっていて、家は数軒建っているだけで寂しいところだ。
四稜郭は、蝶が羽を広げたような形の堡塁で、周囲に土塁と空堀をめぐらし、4隅に砲座を設けたが、建物は造られなかったという。
防御施設としての四稜郭は、高台とはいえ、北東部だけが崖地の決して要害地にあるとはいえないだろう。また、急造なだけあって、郭内の面積は約2,300㎡と城郭としては非常に狭く、土塁の高さも2m前後ほどと低く、鉄砲のみならず大砲を充分に備えた新政府軍相手の戦争では、僅か数時間で陥落したのもうなずける。
しかし、まさに蝶が羽を広げた形をした土塁が良好に残り往時を偲ばせ郷愁を誘う。
(1995/05/01、2012/08/01登城して)
ギャラリー
四稜郭縄張絵図(現地説明板より)
蝶が羽を広げたような形の堡塁で、周囲に土塁と空堀をめぐらし、郭内(面積約2,300㎡)の4隅に砲座を設けたが、建物は造られなかったという。
四稜郭位置図(現地説明板より)
明治2年(1869)5月11日、新政府軍(長州藩、備前岡山藩、備後福山藩)は箱館総攻撃を開始し、同日未明、岡山藩・徳山藩(長州藩の支藩)の藩兵は赤川村を出発し、四稜郭の攻撃を開始した。松岡四郎次郎率いる旧幕府軍は四稜郭の防御に努めたが、新政府軍には福山藩も加わり、さらに長州藩兵が四稜郭と五稜郭の間に位置する権現台場を占領したため、退路を断たれることを恐れた旧幕府軍は五稜郭へ敗走し、わずか数時間で陥落した。
四稜郭跡の東側に立つ説明板
駐車場は、四稜郭跡の東側にあります。車を停めて四稜郭へ向かうと、縄張図付きの説明板が立っています。背後の土塁が四稜郭跡です。
西側の横矢の掛かる土塁と堀跡
虎口前に立つ説明板と石碑
四稜郭の虎口は、一つだけ南側にあり、その手前両側に説明板と石碑が設置されている。
虎口
虎口を土塁上から
当写真は、虎口の東側土塁上から撮ったものだが、虎口周辺とその向こうの蝶の羽を広げた形の一部の土塁がかっこいいですね。右奥には砲座が見える。
【土塁上を時計回りで一周】
土塁上を時計回りに廻って撮影。何枚も掲載するほどのものではないかも知れないが、「蝶が羽を広げた形」の土塁が妙に気に入ったので、いろんな角度からの写真を掲載しました。
南側土塁
西側土塁
中央奥に砲座が見える。
北西隅の砲座
郭内の4隅には砲座が備えられていたが、実戦で使われることなく五稜郭へ敗走した。尤も、これで官軍の攻撃から身を守れたかどうかは疑問ですが・・・。
北西隅の土塁上からほぼ全景を
完全な全景を収めることは出来なかったが、なんとなく「蝶が羽根を広げた形」が分かるかと思います。中央やや右奥に虎口がみえる。ただ、目の前の砲座が分かりづらいかも・・・。
北側土塁と自然広場(左)
土塁と空堀(北東隅外側から撮影)
土塁の高さは、せいぜい2mほどで、空堀も浅い。尤も、かなり埋まってしまっているだろうけど・・・。
北東部土塁外側から郭内を
東側土塁(南東隅土塁上から撮影)
東側土塁上からほぼ全景を
南東隅土塁上からほぼ全景を