武蔵 別府城(熊谷市)

西側土塁・空堀と喰い違い虎口

平安時代末期から戦国時代までの(東)別府氏の居城

別名

東別府館

所在地

埼玉県熊谷市東別府、東別府神社(香林寺の西150~200mほどにある)
香林寺:東別府799、電話048-532-7577

形状

平城

現状・遺構等

現状:東別府神社等
遺構等:曲輪、土塁、堀、虎口、石碑(3基)、説明板

満足度

★★☆☆☆

訪城日

2009/08/28

歴史等

別府城(東別府館)は、成田助隆の次男行隆が平安の頃に築いたといわれている。
別府氏は、成田氏系図によると、成田助隆の次男行隆が別府に住んでから、その子太郎能幸は東別府に、次郎行助が西別府に数代相対して領地した。
太郎能幸に始まった東別府家は、それから11代目の尾張守長清まで続いたが、天正18年(1590)の豊臣秀吉による小田原征伐に際して、 後北条方についたために家禄を失ったため、別府城も廃城になった。
南北朝動乱期に南朝方の北畠顕家が討ち取られた後、その父・北畠親房は常陸に入り、小田城など南朝方の拠点を確保したが、 この南朝方の北畠軍を討つために北朝方の足利勢は武蔵武士を主体に常陸出陣を行なった。別府氏も、浅羽太郎左衛門尉、奈良五郎左右衛門尉、 毛呂八郎、成田四郎次郎などと共に、北朝方の高師冬勢に参陣した。彼らの活躍で、小田城の北畠親房は吉野に敗走して、 関東における南北朝の争乱は終結したという。
この時の別府氏の出陣記録を「別府幸実着到状」に著した別府氏は、別府城(東別府館)ゆかりの武将で、幸実は暦応元年・延元3年(1338) に高重茂に従って上洛し、伊勢・伊賀等を転戦し、北朝方の武将として数多くの勲功を挙げ、足利尊氏から別府郷や深谷市東方、 越生郷地頭職などをあてがわれている。
『「現地説明板・碑」、「中世武蔵人物列伝・埼玉県立歴史資料館Ⅱ編(さきたま出版会刊)」より』

現況・登城記・感想等

別府城(東別府館)は、東別府神社境内として約60m四方(土塁内側で)の規模を有し現存している。説明碑によると、 「城跡は東西2箇所に分かれ、現在残るのは西城跡」とのことである。
西城跡(神社境内)の周囲をめぐる高さ約2mの土塁と幅約3mの堀は、実に良好に残り見応え充分である。中でも、 北西角付近は最も規模が大きく、堀底から土塁上まで4.5~5mもあり迫力がある。南側の多くが欠けてしまっているのがつくづく惜しい。
虎口は、南・西・東の3箇所あるが、西は喰い違いになっているのがよく分かる。
境内には「別府城趾」「東別府館趾」「別府城跡(説明文付き)」の3基もの石碑がたち、地元の方により、 大切に遺跡保存がなされてきたことがよく分かる。
尚、東方150m~200mほどにある「香林寺境内」 は、字中廓といい、字名を考慮すると、方形郭が連続する縄張を有する城郭であったという説がある。一方、この別府城と同じように「別府城」 或いは「東別府館」ともいわれ、それぞれ別々のものであるという説もあるようで、名称も含めて何ともややこしい!?
(2009/08/28訪れて)

ギャラリー

㊧正面(南)虎口の土塁と、㊨土塁上にたつ石碑と説明板
東別府神社(別府城西城)への正面入口(虎口)は南にある。土塁上(左写真の手前の土塁)には 「史蹟東別府館趾」と刻まれた石碑と別府城跡の説明板がたっている。尚、この辺りの土塁は1mほどしかなく、堀も残っていない。
 

石碑
石碑は、右上写真の石碑も含めて3基もあり、この遺跡が地元の方から如何に大切に保存されてきたかが分かる。 下写真の両石碑にはそれぞれ「別府城跡」「別府城趾」と刻まれている。㊧の石碑は、城跡の南西部に祭られた神明社の手前に建ち、 別府城に関する説明文も刻まれている。㊨の石碑は、城跡の北西部に建てられているが、非常に背が高く、5m近くあるだろう。
 

西側土塁・空堀と喰い違い虎口
東・西・北側の土塁と空堀は、良好に残っている。中でも、西側の虎口付近は、土塁・ 空堀ともに非常によく保存されている。虎口は喰い違いとなっていると同時に、 通路が土塁と平行しているため写真左側土塁から横矢がかかるような構造になっている。

北西隅から北側の土塁と空堀を
北西角付近の土塁と空堀は、最も規模が大きく、堀底から土塁上まで4.5~5mもあり迫力がある。

東側の土塁と空堀
東側は、やや改変されているのか、空堀の幅が狭く、土塁下は犬走りのようになっている。

東側虎口(城内から撮影)

香林寺
東方150m~200mほどにある「香林寺境内」は、字中廓といい、字名を考慮すると、 方形郭が連続する縄張を有する城郭であったという説がある。一方、この別府城と同じように「別府城」或いは「東別府館」ともいわれ、 それぞれ別々のものであるという説もあるようで、名称も含めて何ともややこしい!?

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