大手口から二の丸、本丸方面の土塁を見上げる
御館の乱の際に景虎支援の後北条勢の侵入に備えて景勝の命で築かれた城
別名
荒砥城
所在地
新潟県南魚沼郡湯沢町神立（芝原トンネルの上）
【アクセス】
関越自動車道の湯沢インターを降りると国道１７号線へ出るので、そこを左（南）へ曲がる。５ｋｍほど進み芝原トンネルのすぐ手前の道を左折し旧道へ入る。旧道を１ｋｍ弱登っていくと左側に説明板が設置された駐車場（５～６台駐車可）がある。ここから城址までは徒歩約１０分ほど。
所要時間
駐車場から二の丸下まで約１０分、今回の総見学時間は５５分。
形状
山城
現状・遺構等
【現状】 山林
【遺構等】 曲輪、土塁、虎口、空堀、竪堀、標柱、説明板
満足度
★★★★☆
訪城日
２００９／１０／０４
歴史等
荒戸城は、天正６年（１５７８）上杉謙信が春日山城内で死去し、後継者をめぐって上田長尾氏出身の上杉景勝と小田原の後北条氏出身の上杉景虎が争った御館の乱の際に、後北条氏勢の関東からの侵入に備えて、景勝が登坂与衛門尉らに命じて築かせた城である。
同年９月、景虎の援軍として三国峠越えに越後へ侵入した北条氏照・氏邦を大将とし、厩橋城将北条（きたじょう）高広・沼田城将河田重親を先鋒とする後北条勢により、 樺沢城とともに攻略され落城した。
後北条勢は樺沢城を拠点として、北東７ｋｍの地にある坂戸城をはじめ板木城、浦沢城を攻めたが、陥落させるまでには至らず、御館の乱は長期戦の様相を呈し始めた。
越後の冬は早く、しかも厳しい。後北条軍は、北条高広・河田重親等を残し、来春の来越を約束して関東へ引き揚げた。
そして、景勝派優勢のうちに年は変わり天正７年（１５７９）２月３日、景勝勢は後北条勢の来援のない樺沢城を奪還し、さらに３月には荒戸城も奪還した。
以降、荒戸城は三国峠の押さえとして、慶長３年（１５９８）に景勝が会津移封となるまで城代が置かれた。
『「歴史と旅・日本城郭総覧（秋田書店刊）」、「歴史群像スペシャルＮｏ１（学習研究社刊）」、「現地説明板」他参照』
現況・登城記・感想等
荒戸城址は、綺麗に整備されて雑草も少なく、気持ちよく散策できます。
規模は小さいながらも曲輪・土塁・横堀・竪堀などの遺構が良好に残り、土塁と空堀のなだらかな曲線が美しい。
中でも、登城口から雑木林の中を１０分ほど登ると、突然目の前に現れる折り重なった土塁や空堀の光景は感動ものです。
それほど素晴らしい城址であるにも関わらず、新潟県の他の多くの城址が、今年（２００９年）のＮＨＫ大河ドラマ「天地人」の人気を当てこんで、やたらと多くの幟がたてられているのに、何故かここには一本の幟もないのが不思議です。
（2009/10/04登城して）
ギャラリー
荒戸城縄張略図（現地説明板より）
土塁で囲まれた本丸を中心に空堀で囲まれた二の丸、三の丸があり曲輪の入口は、それぞれが外枡形で固められた堅固な造りになっている。 
①駐車場
説明板左側の階段を登って登城します。この駐車場の１００ｍほど手前にも「大手道登城口」の標識があり、勿論そこからも登れますが駐車場所がありません。 
②旧三国街道（上杉軍道）
上写真階段を登ると、この旧三国街道へ出ます。謙信の１５回（１４回という説もある）にもわたる関東平定（侵攻）に当たって通った上杉軍道ですが「御館の乱」では後北条氏の軍勢の侵入路となってしまったようです。 
③大手登城口
軍道から、綺麗に整備された大手登城道を登って行きます。 
④大手口から二の丸、本丸の土塁壁を
駐車場から雑木林の中の道を１０分ほど登ってくると、突然目の前に折り重なる土塁と空堀が現れます。これが見えた時は驚きと感激で・・・ウッシッシ（笑）。正面手前が大手枡形虎口の土塁、その向こうに見えるのは二の丸の土塁壁、さらに奥上に本丸の土塁壁が見えますが、写真ではちょっと分かり辛いかも。 
⑤大手枡形虎口下の空堀
この角度から見る枡形虎口の土塁壁（手前）と二の丸土塁壁（中央奥）、そしてカーブする空堀の光景も絵になります。 
⑥大手口枡形
左の凹部は山裾へ竪堀になって落ちている。 
⑦大手口枡形から二の丸への土橋
この土橋を渡って二の丸へ入ります。写真奥に見える土塁上が本丸で、土橋の左側は竪堀です。 
⑧竪堀
上写真左側の竪堀です。この竪堀も実に良好に残り山裾へと落ちていっています。この大手口枡形付近は見応えのある遺構がいっぱいです。 
⑨二の丸と本丸への坂道
手前が二の丸で、中央の坂道を登って本丸虎口へと行きますが、堀でもない所に、このような土橋状の通路は珍しいですネ！ 
⑩本丸虎口へ
上写真の坂道を登ると、右へ大きく曲がる登り坂の本丸虎口へ。 
⑪本丸
本丸は標高７８９ｍで三方を土塁で固められています。南側にも虎口があり、崖に沿った細い道で三の丸へ繋がっています。 
⑫三の丸へ
三の丸は本丸の西下にあります。三の丸の南東部には空堀が食い込んできて、本丸南虎口からの通路と三の丸南部分を分断しています。 
⑬三の丸西虎口
写真奥が三の丸ですが、虎口を入った所が長方形に窪んでいたが内枡形？ 
外枡形から三の丸西虎口を見上げたものです。 
⑭三の丸西虎口外枡形
両側の空堀に挟まれた部分が外枡形とのことですが、私にはどうもイメージが湧きません。左の空堀が三の丸北側を巡る空堀で、右の空堀は外枡形を巡る空堀です。 
⑮三の丸下の空堀
三の丸下の西から北にかけてカーブを描く空堀が良好に残っています。 
⑯三の丸外枡形を巡る空堀
外枡形の西から南にかけて巡っているこの空堀は、南部分は竪堀となっています。 
⑰三の丸外枡形南側の竪堀
この空堀は西部分（写真手前左部分）は横堀で、南部分（写真右手前から奥へ）は竪堀となって三の丸南部へと登っています。 
⑱天然の濠？
二の丸（左上）と三の丸（右上）との間は天然の大空堀のようになっています。勿論、一部（写真奥辺り）は手を加えているでしょうが・・・。 
⑲本丸東下の竪堀
本丸東下は帯曲輪のようになっており、それを断ち切るように竪堀が掘られています。右上が本丸で、左下へと竪堀が落ちていっています。竪堀の向こうは帯曲輪？ 
